鳴門骨

天然鯛のアラが売っていたので買って出汁を取っていた。しばらく煮込み、骨から身を剥がすと鳴門骨が出てくる。天然という触れ込みは本当だったのだな。

ところで会社では課長に僕が仕事を辞めようとしていることが伝わったらしく、「一度話をさせて欲しい」と言ってきた。

年度が変わって予定通り異動となり、僕は自分がこれまでやっていたようなことを専門的に行う新設組織の人柱となった。

ちょっと面倒な交通整理くらいの仕事で誰にでも簡単に出来るようなことであるはずだが、同じチームに放り込まれたほとんどの人間にとっては未知の業務であるので、右往左往している。

この混沌とした状態で辞められたら……いや、辞めるのだが、さぞ混乱することだろうと思う。混乱は楽しい。楽しいことは良いことだ（三段論法）。

それにしても、自分の存在が他人に影響を与える状況というのは居心地が悪いものだな。皆、僕の存在など気に止めずにやってくれれば良いのにと思う。僕は羊飼いの杖になるつもりはないのだ。