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木灘日記

日記を書きます。

汚い幻想文学 - チャールズ・ブコウスキー『パルプ』

 

パルプ (ちくま文庫)

パルプ (ちくま文庫)

 


 人生初のブコウスキー。どうもインターネットを見ていると、初ブコウスキーが本作であるのは何か間違ったのではという気がする。
が、僕は別に上等な読者ではないので同一の著作者の作品だからといって、これを読んだら次はそれ、それを読んだら次はあれ、みたいに計画的且つ効果的な読書を試みようとは思わないし、出来ないだろう。

ブコウスキーは僕が知るネット上で魅力的なテキストを書くと思う人間が好きな作家としてあげていたので気になっていた。読んでみたら、やはりその文章にはブコウスキーの影響があるように思われる。厭世的で、自分を社会不適合者だと思っていて、酒と薬で正気を保ちながら生きている。そして僅かなハードボイルドの匂い。

パルプとは粗悪な材質の紙のことで、ひいてはそうした紙に印刷されるのが相応しい安っぽい内容のフィクションを指すものらしいが、その名を冠した本作が果たして安っぽい内容のフィクションなのか、僕には判断できない。

小説を読みながら上等だとか下等だとか考えたことがない。自己啓発とかビジネス本の類も一切読まないしな。良い読書ってなんですか。悪い読書って? しかし、なんとなく、この本からは敢えて安っぽい要素を取り込んで書いているような意図性が感じられた。

内容は大筋として、不細工で酒浸りで貧乏な競馬好きの探偵、ニック・ビレーンが一つの依頼を皮切りに次々と別の案件・事件に巻き込まれていくというものだが、途中からニックの頭がおかしくなったのか、世界がおかしいのか、どちらともつかない展開を見せ始める。頭のイカれたアル中の曖昧な世界認識が現実と幻覚の境界を曖昧にしていて、汚い幻想文学のようで面白かった。

図書館からはもう一冊「死をポケットに入れて」を借りてきているので、次はそれを読んでいこうと思う。返却期日があると読書は捗るもんである。本当は書籍というものは自分の所有物にしたいのだが、気になる本を手当たり次第に買う金はないので、業腹ながら甘んじるしかない。

返却するときに、前回貸し出し中だったサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼の体験本などを次は借りてこようと思う。
今の仕事を辞めたら、一ヶ月くらい何とか猶予を空けて巡礼に行きたい。サンティアゴ巡礼にはもう7、8年前から憧れがあるのだ。

青い空、白い雲、黄金色の麦畑、遥か丘の向こうまで続く細く長い道。町までの距離を印したメルクマールに腰を下ろしてぼんやりと休んでいると、目の前をホタテ貝の殻を身に着けた巡礼者たちが、徒歩で、自転車で、時には馬で、通り過ぎて行く。汗ばんだ手足を心地よい風が撫でる。草木がさわさわと音を立て、目の前の風景全体が身じろぎするように震える。僕は再び立ちあがって、また視界の果ての丘を目指して歩き出す。

つまり、最高ってことだ。

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