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木灘日記

日記を書きます。

『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 Ⅱ.lost butterfly』を観てきた

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まず全体として大変ゴージャスな映像作品だったなという感想。

そして鑑賞後に思ったのは原作を遊んだにも拘らず驚くほど内容を覚えていない自身の記憶力に対する失望と、「僕はたぶんHFがあんまり好きじゃないんだな」ということだった。
目が覚めるような映像美と全編に渡る暗く重い質感は、そこらのアニメ映画では到底同等のものを用意することは適わないだろうなという感心はあったものの、それが僕の作品評価にどこまで寄与したかというと、どうも今一つピンとこないというのが正直なところだった。

ざっくり言ってしまえば、HFは桜のことがどれだけ好きなのかが試される作品なのだと思う。キャラクターを好きになる、というのは当たり前のことのように思われるが、HFは求められる深度がかなり深い。HF2を観て「ふーん、えっちじゃん」などと架空の越前リョーマが脳裏を過ってしまう程度の人間では適正不十分であろう。

とはいえ、桜についても幾つか思うところはあった。
まず桜とはファム・ファタールだということ。本人の意図する/しないに拘らず男とその周辺を破滅させてしまう。

記憶頼りなので何か覚え違いをしている可能性もあるが、Twitterで桜についての言及を目にした。わるい女、として認識されがちな桜について異を唱えるもの。桜は間桐家に養子に出され、性的なものを含む精神的・肉体的な虐待を受け続けたことで精神的には幼児性を維持したままで、反対に肉体だけが無理やり成熟させられてしまった悲劇の子供(少女)である、というような話だったと思う。

これについて、境遇の悲劇については尤もな話だが、桜の精神が子供のままなのかというとそうではないと思ったのと、また桜がわるい女であるという問題とも別であろうというのが僕の考えだ。

先にも書いた通り、桜は時には自らの意思によって、またある時は意図しないにも拘らず、男を蠱惑し破滅へ導いてしまうという悪女としての性質、つまり純粋な悪性を後天的であれ獲得してしまっている。
そしてこのような純粋な悪性を持ちながら一人の人間として恋心を抱いてしまう。それが桜というヒロインの持つ悲劇性だと思うのだが、どうか。いや、どうか、と言われてもな。

それにしても、Twitterにも書いたのだが、例の指舐めシーンの異様な艶めかしさよ。あまりのエロ力(ちから)によって蒸れた吐息が可視化されておるではないか。あまりのエロさに僕の脳に色覚異常が発生した可能性もあるが、なんか吐息がピンク色がかってなかった? やっぱり色覚異常かな。僕には完全にピンクに見えたんだけど……。

あとはセイバーオルタとバーサーカーの戦闘ね。あの戦闘、派手でゴージャスで凄かったよね。でも何が起きてるかほとんどわかんなくなかった? 僕の動体視力の衰えか。そうか、もう僕もオッサンと言って良い年齢だしな……。

しかしサーヴァント同士の戦いというのは難しいものだなあとは感じざるを得なかった。人知を遥かに超えた者同士の異常な力のぶつかり合いを、異常な作画レベルで描くことに成功すると何が起こるのか。
剣が、拳が、振るわれるたびに多様な色彩の閃光が瞬き、空は割れ、大地は砕け、建物は木端微塵に吹き飛ばされる。そして矮小ないち人間たる僕は目の前の映像についていけず、おろおろと画面上に視線を彷徨わせるばかりである。

怪獣同士の戦いを見ているみたいに「なんか良くわからんが凄い」以外の感想が出てこないのだ。実際に何をやっているのか全然わかんねえ。僕などはスローで見たとしてもちょっと怪しい。

ああいう人外の戦いの描写はどうも小説だとかADVとかの領域という気がしている。Fateもサーヴァント同士の常軌を逸したハイレベルな戦いは文章だからこそ描写と読者の理解を一致させることが出来ていたところがあるのではないか、と思った次第。映画を見ていて地の文が欲しくなってしまった。もしくは解説役でも良いよ。

まあ、結構楽しんだといえば楽しんだ。しかしそのあとで知り合いに2度目の鑑賞に誘われた際、少し悩んで断った。そんなところ。