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木灘日記

日記を書きます。

今年初めての劇場へ - 『メイドインアビス 深き魂の黎明』



原作である漫画を認識したのは単行本の1巻が出てすぐだったと思う。おそらく当時から評判の作品で目に付きやすいところに置かれていたのだろうが、表紙のちょっと絵本っぽさもある可愛らしい絵柄と「アビス」という不穏な単語が入ったタイトルのアンマッチに目を引かれた。が、当時は絵柄の方が内容を表しているのだろうと受け取って、タイトルについては「ちょっと捻ったメイドものだろうか」などと実態とかけ離れた認識を抱き関心が外れることになった。

そうやって関心が外れたまま時間が経ち、5巻が発売されたころ、偶々Webでの試し読みに辿り着いた(辿り着いた経緯は忘れてしまったが)。そしてほんの少し読んですぐに書店へ走ったのである。その書店とはとらのあなであり、腐るほど有り余っていたポイントをクーポン券に交換し、それを使って5巻まで買った。

家に帰って読みふけり、5巻の最後まで読み終わって思ったことは「まだまだ自分の知らない面白い漫画があるんだな」という感動だった。

そして今回劇場版として作られた『メイドインアビス 深き魂の黎明』は漫画の5巻前後の内容を映像化したものにあたる。

平日だからさほど人はいないだろうと思ったのだが、上映一時間前に予約サイトを開くと案外席が埋まっていた。だいたい3割くらいか。劇場へ行くと半分くらいの埋まり具合だった。開場を知らせるアナウンスで、担当者が「黎明」の部分で一瞬口ごもって「はんめい」と読んだ。上映は先週末からだし当日も初回上映ではなかったのだが、初めて読むことになったのだろうか。

作品の内容としては言うまでもなく、ボンドルドとの戦いとその周辺についてが見事に映像化されている。映像の出来としてはかなり良く、戦闘はレグの腕のワイヤーがぐるぐるに渦巻きすぎではないかと思われつつもグリグリと動いて飽きずに見られたし、ナナチはやっぱり可愛いのである。ただ、おそらく多くの観客が漫画を読んで先の展開を知っていると思われるなか、それを制作者側が分かったうえで不穏な場面で感動的な音楽を流して悪趣味さを際立たせるなど、劇半については意図が見えすぎて鬱陶しく感じるところも多少あった。

しかし、やはり未完結の漫画原作のアニメ化(映画化)というのはあんまり僕向きではにないなとも思った。もともと観に行くつもりはなくて、『パラサイト 半地下の家族』を観に行こうかと思っていたところTwitterでなんだか話題になっていたから、漫画版を読んだうえで尚大騒ぎしているのだからさぞかし映像化として白眉なのだろうと思ったのだが、実際に観た感想として想像を超えたかと言えば、十分に良かったけど、まあ観ても観なくてもどちらでも良かったかな、という感想になる。

これは「作品として凡庸だ」という作品への評価ではなく、僕自身のアニメに対するスタンスの問題である。僕はこれまで漫画原作のアニメ化を、漫画を先に読んだ状態で観て漫画以上の満足を感じたことがない。漫画を読んだときに自ら脳内で作り上げてしまう音と映像のイメージを超えることが難しいのだと思う。まあ、「超えていない」という表現も恐らくは正しくなく、単に「映像」というものに対する僕のセンサーが非常に鈍く、センスがない可能性が非常に高いのだが。

そして未完結作品のアニメを観て思うのはアニメの出来不出来ではなく、いつだって「早く漫画の続きが読みてえな」なのである。

とにかく、漫画と同じ内容をやるなら自分には特に必要ないな、というこれまでの自己認識を新たにしたのであった。以上。



漫画は読め。 

メイドインアビス(1) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(1) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(2) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(2) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(3) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(3) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(4) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(4) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(5) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(5) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(6) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(6) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(7) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(7) (バンブーコミックス)

 
メイドインアビス(8) (バンブーコミックス)

メイドインアビス(8) (バンブーコミックス)