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木灘日記

日記を書きます。

きらきらしたものが見られるんだって? - チームラボボーダレスへ行く

「チームラボボーダレス 入り口」の画像検索結果

いつだったか、チームラボへ行った他人の日記を読んだことがあった。

そこで幾つか貼られた写真たちはどれもきらきらしていて、きらきらしたものが好きな僕はそのうち行きたいものだと思っていたのだが、今回ふと思い立っていよいよ行くか、となったわけである。

チームラボの展示はどうも一人で行くよりも誰か連れ合いがいると良かろうという話だったので、前日の連絡だったにも拘らず付き合ってくれた同行者と二人で行くことになった。

誘っておきながら明らかに遅刻間違いなしの時間に家を出てお台場へと向かう。最寄り駅からお台場には時間はかかるものの案外手間なくアクセスできるもので、一度乗り換えるだけで行くことが出来るので楽で良い。以前住んでいた阿佐ヶ谷よりも楽な気がする。でも住心地は阿佐ヶ谷の方が良かったかな。スーパーも近かったし。今は山の上みたいなところにいるのでちょっとした買い物などが大変不便且つ面倒に感じて引き篭もりが加速するんだよな。

んで、チームラボの施設はビーナスフォートに隣接しているとのことだったので、取り敢えず同行者との待ち合わせ場所はビーナスフォート付近で適当にすれば良いかと話をした。

30分ほど遅刻(大遅刻)していくと、同行者はペットショップにいるとのことで、そちらへ向かって犬や猫などを見た。犬猫の入った柵にかかったプレートを見ると、犬種の欄に「ミックス」と書かれたものが割合として多いようだった。要は雑種であるのだが、雑種と違うのはより商品価値を高めるために狙って交配されたものであるという点であり、プレートには40万や50万など高額の数字が並んでいる。

同行者も以前実家で雑種犬を飼っていたことがあったのだが、その犬はペットショップで2000円で売られており犬よりも小屋の建築費用の方が高くついたそうで、雑種の風格を感じさせるエピソードだなと思った。

それからビュッフェ形式の店で昼食を済ませ、1000円台で食べられるビュッフェに美味い店無しという思いを新たにようやくチームラボの施設へと向かった。

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で、これである。

ちなみに入り口はこの手前右側にある。チケット購入済みの人間がこの細長い歩道を視界の向こうを超えて続いており、更に施設敷地を出て一般歩道にまで数十メートルはみ出して列が形成されている。想像より列が進むのは早かったが、それでも入場まで小一時間ほど待つことになった。

施設内のチケットゲートをくぐったところで簡単な説明を聞く。英語、中国語、韓国語あたりの表記があったような気がする。入り口の帳をくぐると道が3方向に伸びている。中はかなり広く、また順路もない、そして展示物は絶えず施設の床や壁を動き移動し続けるためタイミングによってまったく異なるものが見えるのだという。

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床、壁、鏡、合わせ鏡、それらに映し出される赤や青、紫の花。花びら。結び、萎み、広がり、散って、辺り一面を埋め尽くす。どこが空間なのか一瞬分からなくなる。

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右上の小高く盛られた丘のような場所では背後の壁面から細く青い線が伸び、丘の凹凸を滑るように流れ落ちていく。さすがに人が多い。人がもっと少なく、一人きりだったらいつまでも眺めていられそうな気がする。

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風のように横向きに流れていく光、その上から漢字が次々と落ちてくる。壁に手を押し付けると漢字たちが手のひらに吸い寄せられながら消えていく。鳥、月、雷、雨、螢……。手のひらの中へ消えていった文字に応じた変化が壁にあらわれる。

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天上からLEDのケーブルが辺り一面に垂れ下がる部屋。床は鏡。明滅する光が上から下へ降り注ぎ、下から上へ駆け上がっていく。きらきらだ!



ここはチームラボのアプリにも対応した展示であり、室内の端末近くでアプリを起動すると表示される象形文字を選択するとそれに応じて光の明滅が変化する。動画は『雨』を飛ばしたときのもの。

降り注ぐ光を目で追うと床の鏡に光が反射してどこまでも光のすじが続いているように見え、膝の力が抜けて鏡の奥に落ちていくような錯覚を覚える。

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様々な模様に変化する蓮の葉のようなオブジェを掻き分け掻き分け奥へと進んでいく。写真が下手くそでどうしようもない感じだが、鏡を効果的に使っていてかなりの奥行きに感じる。

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個人的に一番良かったのはこの無数のランプが吊るされた部屋。上下左右視界いっぱいに赤が灯り、非現実的な空間を醸す。熟しすぎた果実の如き絢爛と腐爛の赤、腐れ落ちる間際の赫灼。

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もちろん様々に変化する。

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様々に。

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夢幻よ。

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施設内にはこの部屋を含めて数カ所、入れ替え制の展示があって、混雑していた当日はどれも最低30分、一番長いものは1時間ほど待たされることになった。せっかく行ったのだから時間さえ許せばどれも見たほうがいいんじゃないかとは思うが、すべてが待ち時間に見合う内容であるかは保証しない。ただ、このランプの展示だけは、ぜひ見ると良いと思う。

他にも施設内の壁を行列を作って練り歩く鳥獣戯画風の水墨画や、蛙や蜥蜴、虫などの絵に色塗りをして係員にスキャンをしてもらうとそれらの動物が部屋中を歩き回る部屋、他にも様々な展示があって、入れ替え制の展示の待ち時間もかなり長くはあったが、気がつけば14:00の入場から5時間以上が経過していた。

同行者はこのあと用事があるとのことで、会場を出てそのまま駅へ向かった。

載せた以外にも結構写真を撮ったつもりでいたのだが、実際にはあまり撮っていなかった。目の前の光景に目が奪われると夢中になってしまって、写真のことをすっかり忘れてしまうのだ。撮っていても、心はまったく撮影に向かっていないから手ブレ仕放題。しかしまあ、どちらにせよ僕に撮影センスなどはないから記録として分かりやすい写真が何枚か残っていれば後年記憶を掘り起こすには十分だろう。

展示内容について事前に写真は見ていたものの細かな予習などはまったくしておらず、内容の想像もあまりついていなかったから、意外性も感じられて良かった。

もう一回行きたいかと言われると、まあ当分はいいかなって感じだけど、いつか人が少なくなった頃に行ってみるのも良いかもしれない。

ところでこうしたプロジェクションマッピング的なグラフィックアートについて、実はサンティアゴ巡礼の際、ついでにどうしてもパリで見たいと思っていたものがあった。

結局、日程的な余裕がなくなってそれは叶わなかったのだが、今回チームラボの展示を見に行って少しだけ心残りが和らぐような気がした。とはいえ、機会があればこちらも是非見たいもんである。


Japon rêvé, images du monde flottant à l’Atelier des Lumières

凡夫が見た夢 - 『FRANK』

FRANK フランク(字幕版)

FRANK フランク(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

この映画、Blu-rayが存在せずDVDしか購入の選択肢がないので未だに所持せずにいるのだが、このたびAmazonのPrimeVideoに入ったようなので映画館で観て以来、久しぶりに再視聴をした。

僕はこの映画がかなり気に入っていて、「好きな映画は?」と尋ねられればいまのところ一番最初に口をついて出るのは本作であると思うくらい強く印象に残っている。

一番最初に思いつくからといって一番好きな映画なのかというと、それはちょっと分からないというか、一番とか二番とか不毛なこと言うのはやめろって感じなんだけど、とにかく数ある映画、そして数ある映画の中から僕が観た僅かな作品群のなかで特別な作品であることは間違いない。

内容としてはミュージシャンに憧れながらも一曲も曲を完成させられず、また作りかけの曲にはセンスの欠片もない凡庸なジョンが、フランクという常時謎の被り物をした天才ミュージシャンの主催する変人バンドに入ることになり、一年近く森の中で人知れずアルバム制作に勤しんだり、露出を嫌うバンドメンバーたちを騙して音楽祭に出ることになったりする。

という話なのだが、凡庸な才能しか持たないジョンの悲しさよ。志はあれど自分が凡夫に過ぎないことを自覚しているが故の苦しみというか、この先どうにもならないだろうという閉塞感を彼は感じている。

そしてフランクと知り合い、天才である彼についていくため仕事を辞め、祖父の遺産を音楽制作のためつぎ込んだり、自分たちから表に出たがらない変人だらけのバンドのフロントマン的な立ち位置に出ようとしたりするわけだが、「彼らについていけば自分も何者かになれるんじゃないか?」という感じの夢見る凡夫としての立ち回りが涙を誘う。

ジョンが己の人生をベットしようとする先であるフランクは大きな問題を抱えているし、他のバンドメンバーの変わり者揃いであるからジョンとその他の人間とのあいだで相互理解は発生せず感情は空回り、物語は常に混乱と不穏さと共にある……のだが、そういった様々を通過した結末のシーン、これがすばらしい。

鬱屈した怒り、焦り、諦念。己の凡庸さに自覚を持てる程度の賢しさを持ってしまった悲しき凡夫よ。お前の見た夢の果てに一つの楽曲が生まれ、そして、そこにお前はいない。

FRANK フランク [DVD]

FRANK フランク [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2015/03/18
  • メディア: DVD
 

伊勢山皇大神宮を参拝する

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氏神神社への参拝は元旦に済ませた。ので、今日は伊勢山皇大神宮へ行った。

時間は夕方17:00過ぎ。少し前はこの時間になるとほとんど暗闇のようだったのがまだ仄かに明るさが残っていて、気温の落ち込みとは違い、日照時間は徐々に増えつつあるのを感じた。

神社へ続く道に連なる屋台は既に軒並み片付けに入っていて、もう少し遅い時間までやっていそうなものなのになと意外に思ったのだが、思い切り住宅街のなかにある場所だから、近隣住人への配慮なのかもしれない。

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三が日の最終日、それも夕方なので人は結構少ないと思ったのだが、想像よりかなり参拝者は多いようだった。神社に入っていくと拝殿まで30メートルくらいのところから横10列くらいの太い行列が出来ていて、氏神での長くも細々とした人の並びと比べると、やはり多少人混みに揉まれるくらいのほうが初詣らしさが出るなと思った。

列の目の前には4人連れの家族がいた。娘が父親に「何をお願いすればいいの?」と尋ねたのに対して父親が「長生き出来ますように、ってお願いすれば良いよ」と返していて、「なんで?」「長女だから、長寿……」「ふーん……」という冷えた会話が発生していた。

おみくじ、昨年は引いた記憶がないが、今年は引いた。結果は大吉であった。

急に目の前が開けて運気は隆盛に向かう時。将来の計画をしっかりと立て、心を引き締めていけばかならず大きな進展が得られる。万事好調。全く心配はない。

あまりにも強気な書き出しなのもどうかと思いつつ、その他分野別の内容も軒並み調子の良いことが書かれているので、自分を乗せてやっていきたいと思う。

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そして帰り道、野毛の正月風景である。

こんなに肌に馴染む言語感覚を他に知らない - 平方イコルスン『スペシャル』

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最近あんまり漫画を読まなくなってきていて、いや、読まないと言っても流行り物には結構手を出しているしまったく漫画を読まない人間からすれば十分に漫画を読むオタクであることには違いないのだが、書店などで所謂ジャケ買いをするようなことがめっきりなくなった。

これを面白い作品への欲求の鈍麻、おっさんになって守りの姿勢に入った、など様々に受け取ることは出来るだろうが、とにかくジャケ買いというものをしばらくしていない。

先日、僕は引っ越しをして荷物整理もしたのだが、ハリネズミのように隙間さえあれば本を刺しておいた棚から全てを取り出してみると、想像よりかなりの数の漫画を所有していたことが分かった。そして、これを機に相当量の書籍を処分した。その中には文庫本や単行本、そして当然漫画も含まれた。

処分の基準として、単純に手元に置いておきたいもの、再入手に困るもの、未完結の作品は手元に残すことにした。

そして全巻買ったものの読み返すことは滅多にないだろうものや、金さえ払えばいつでも手に入るもの、発行巻数が少なく電子書籍に切り替えても負担が少ないものなどは気合を入れて処分した。

とはいえ実際やってみると仕分けは困難を極め、前述の通りに綺麗に仕分けられているかというとそんなことはなく、漫画単体としてはそこまで気に入ったものでなくても、他にお気に入りの漫画を描いていたりすると漫画家単位で残してしまうなど、忖度、贔屓のオンパレードであった。

んで、そんな中、新居の新たな本棚に見事スペース勝ち取った幾つかのうち、平方イコルスンの『スペシャル』の3巻が昨年末発売した。

スペシャル 3 (torch comics)

スペシャル 3 (torch comics)

 

 『スペシャル』がどんな作品なのか一言で言うのは困難なのだが、ジャンルとしてはスクールコメディにあたる。

常に頭部にヘルメットをかぶり続ける女子高生・伊賀こもろと転校生の葉野さよ、そして学校その他の周辺人物によるコミュニケーションの様が描かれているのだが、平方イコルスン独特の文学的言語感覚と人間観察に基づく奇矯なリアクションの応酬がめちゃくちゃ面白い。

この平方イコルスンの独特さは本当に良くて、漫画という限られたスペースのなかで「そこ、必要か?」みたいな登場人物のちょっとした所作や呟きみたいなところを頻繁にコマに拾っていて、でもそういったさりげない一瞬の積み重ねが続くにつれて次第に味わいに変わっていくという、月並みな表現だがスルメのように噛めば噛むほど味がしてくる作家である。

キャラクターのリアクションも奇矯とは言ったが、その奇矯さの面白みだけではなく、そういったキャラクターの言動の根本は我々が日常生活するなかでも感得し得る思考や感情の漫画的誇張表現であり、平方イコルスンの卓抜した言語化センスが光っている。

僕のなかで5指に入る好きな漫画家なのだが、恐らくさほど売れていないように思われるから、ぜひ何かの間違いで流行って欲しいと思う。

あとは完全に願望なんだけど、また小説を書かないかなという希望を7年くらい持っている。

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平方イコルスンは以前「平方二寸」という名前で小説同人誌などを発行していたのだが、7年前、つまり2012年の文学フリマで『世界分の一』という小説同人誌を頒布してから新たに小説を発表していない。

平方イコルスンについてはその少し前にpixivで公開した『けいおん!』の漫画を読んでいて、文学フリマではそれがきっかけでスペースに足を運ぶことに繋がって、結果『世界分の一』を手に取ることとなり、そして平方二寸の小説作品のファンになってしまった。

当時、感動のあまり長文のメールを送って返事までもらってしまったのだが、プロバイダメールだったため解約して以降読めなくなってしまったのが残念で仕方がない。でも、返事が来るとは思っていなかったので相当日和った返信をして半ば一方的に対話を打ち切ってしまったので、曖昧な記憶にしておいたままで良いのかもしれない。

その後は平方二寸が残したフリーペーパー『全家畜』シリーズや他の小説同人誌を手に入れる機会がないか、今でも狙い続けている。

『全家畜』は最後の文学フリマで配布していたバックナンバー+αで幾つか手持ちがあるけれど、『世界分の一』以前の小説同人誌は本当に見つからない。3年ほど前に『猿入り娘』という作品を偶然手に入れることが出来ただけである。

とまあ、自分でもちょっと尋常でない愛好が平方イコルスン(平方二寸)にはあって、小説から漫画の道へ舵を切ったとはいえ彼の言語センスは漫画でも依然発揮されたままであり、一般流通に乗って定期的に作品が読める現状については非常に幸運なことだよな、と思うばかり。以上。

スペシャル 1 (torch comics)

スペシャル 1 (torch comics)

 
スペシャル 2 (torch comics)

スペシャル 2 (torch comics)

 

 

新年は概ねVではじまった

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2020年代へと突入したのはいいとして、今年は既に令和二年である、ということに対してはなんとなくまだ元年であるような気が抜けない。

晦日の夜はVTuberの年越し大魔界村配信を流しつつ、例年通りインスタントの蕎麦を食い、漫然とその時を待つばかりだった。

0時になるのを確認してから近所の神社へ初詣に向かう。狭い神社にも拘らず思ったよりも大勢人がいて、参拝者の列が敷地を通り抜けて道路向かうの公園にまで伸びていた。

30分程度で参拝を終えると、他の人々に混じって境内で炊かれている火に当たった。この火が何なのか良く分からないのだが、時々竹竿の先にスルメをぶら下げた人がやってきて、炎でスルメをあぶっていくのが面白い。神社側のこういう販売物らしい。

元日には姉夫婦と会う予定があったから、甥二人にお年玉をやらねばと帰りにコンビニでぽち袋を買った。コンビニはアルバイト店員が二人で回しているようで、人手不足が叫ばれるなか大晦日に店舗にいなくても良いオーナーはきっと幸運なのだろうなと思った。家に帰るとVTuberは外出前と同じステージにいた。

元日はなんとなく眠るのが勿体ないような気がしていつもだいたい徹夜をしているのだが、別にテレビなどで観たいものがあるわけでも、やりたいことがあるわけでもないのに敢えて徹夜をしてしまうこの非合理性はいったい何事かと思う。

そのあとも驚異の漫然さで夜を超え、朝を迎えた。そういえば初日の出を見ていなかったな。VTuberが未だに同じステージにいるのを確認して、部屋を出た。

姉夫婦の子供は男児二名で、7歳と4歳になる。食事のなかに茹でた鮑があったのだが、自分では食べない4歳の方が食べ終わった残骸である貝殻を手に取ってにおいを嗅ぎ、「くさいけどピカピカ!」と持ち帰ろうとして止められていて良かった。

昼を過ぎて部屋に戻ると、VTuberはやはり同じステージにいた。既に開始から15時間ほどが過ぎており、またそのうち12時間くらい今のステージにいるはずだった。配信のタイトルには「大晦日」の文字が燦然と輝いている。

この配信者の凄まじいところは何時間も同じ場所で死に続けてもまったくメンタルに変調を起こさないところで、平時から落ち着いた丁寧な喋り方が特徴なのだが、開始直後と10時間くらい死にまくった後とで口調にほとんど変化が見られず、悪態や怒りを顕にすることもなく平然と死に続けるのだ。

あまりにも平然と挑み続けるので、「VTuberのなかで唯一本物のAI」や「等速の機械学習を見学しているみたい」などと言われていたりする。

そのあとは特に予定があるわけでもないから、ちょっとうつらうつらしながら配信を眺めていたのだが、やがて遂にステージボスの討伐に成功する瞬間がやってきた。そして魔界村なので即座に最初のステージに戻されていった。

が、しかし、やはり配信者はいたって平然としてというか、むしろちょっと楽しそうに「また2週目も頑張って行きたいと思います」と言って配信を終えたので、ちょっと怖えなと思いつつ、かなり好きになってしまった気がする。

鈴原るる、おすすめです(おすすめしない)。

2019年の風景

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晦日になったばかりの深夜の京浜東北線秋葉原で乗り換えた終電か、その一つ前くらいの電車には思いの外たくさんの人が乗っていた。品川で更に人が増えると車内はぎゅうぎゅう詰めの一歩手前くらいの混雑になった。

皆どこかで酒を飲んできたのであろう。居酒屋で染み付いた酒や油、それから体温の上がった人間のにおいが充満している。

皆、あとは帰路につくばかりだからカップル以外は一人大人しく乗っている。ひっそりと静まり返ったぎゅうぎゅう詰めに近い車内。時々男女のささやき声が聞こえる。

運良く座席の端に座ることが出来たが、手すり部分の壁から乗り出すように朦朧とした表情をした女性がこちらへ頭を傾けている。

同時に空いた隣のスペースには白い小さな紙片のようなものが散らばっていて、通常であれば座席に何か落ちていれば避けたくなるのが人心かと思われるのだが、案外あっさりと新たな人が座った。

こちらに頭を乗り出す女性が気になって携帯を開く気にはならず、車内のあちこちを見回してみると、床に幾つかゴミが転がっている。

何か植物のようなものもあって、乗客に次々踏み潰されて電車の加速や傾きに合わせて滲み出た緑色の汁がすじを走らせていく。ほとんどの人はそれと気づかないまま植物のようなものと、そこから滲出した汁を踏んで更に床を汚していく。

品川を超えたあとは川崎、横浜で大勢の人が下車していった。最寄り駅へ着く頃には随分と人は少なくなった。

空席の真上の網棚には忘れ去られた紫色の花束。

それじゃ、また来年。

グヤバノジュースを飲む

以前、panpanyaの『グヤバノ・ホリデー』という漫画について日記を書いたことがあった。


読み始めのころ、僕はグヤバノという果実はpanpanyaによる創作上の非実在フルーツであると思いながら読んでいたのだが、読み進めると実在のものであることが分かり、まだまだ自分の知らない不思議な食べ物があるのだなあということと、こうした日常からちょっと足を踏み出したところにある未知への好奇心と探訪を見事に描くpanpanyaの漫画力と稀有な作家性に改めて感心を抱いたりなどしたのである。

それからネットでグヤバノ外見やら食味やらを調べたりしつつ、内なる関心を育てていたのだが、先日なんと、知人がこの『グヤバノ・ホリデー』で登場したグヤバノジュースの実物を入手してくれており、これを味わうことができた。

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味わいとしては一般的な果実ジュースとはかなり違う方向性の味であり、さっぱり感や爽やか系ではなく、乳酸菌飲料のようなどっしりとした飲み口と滋味を感じる甘みが際立つ味で、癖のない美味しさだった。

未知が既知となる瞬間の面白さを久々に味わうことが出来て良かった。ジュース一本でこうした体験が出来るのなら安いものだし、上野なんかに行ったときには色々と試してみようかとも思う。

知人は錦糸町のアジア食品店でグヤバノジュースを手に入れたそうだが、調べてみると通販までしているらしい。またいつか味を忘れたころに記憶を復古したくなったら利用してみるのも良いかもしれない。

http://www.asiayaosho.com/SHOP/910174.html

グヤバノ・ホリデー

グヤバノ・ホリデー

  • 作者:panpanya
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: コミック