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木灘日記

日記を書きます。

2019年の風景

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晦日になったばかりの深夜の京浜東北線秋葉原で乗り換えた終電か、その一つ前くらいの電車には思いの外たくさんの人が乗っていた。品川で更に人が増えると車内はぎゅうぎゅう詰めの一歩手前くらいの混雑になった。

皆どこかで酒を飲んできたのであろう。居酒屋で染み付いた酒や油、それから体温の上がった人間のにおいが充満している。

皆、あとは帰路につくばかりだからカップル以外は一人大人しく乗っている。ひっそりと静まり返ったぎゅうぎゅう詰めに近い車内。時々男女のささやき声が聞こえる。

運良く座席の端に座ることが出来たが、手すり部分の壁から乗り出すように朦朧とした表情をした女性がこちらへ頭を傾けている。

同時に空いた隣のスペースには白い小さな紙片のようなものが散らばっていて、通常であれば座席に何か落ちていれば避けたくなるのが人心かと思われるのだが、案外あっさりと新たな人が座った。

こちらに頭を乗り出す女性が気になって携帯を開く気にはならず、車内のあちこちを見回してみると、床に幾つかゴミが転がっている。

何か植物のようなものもあって、乗客に次々踏み潰されて電車の加速や傾きに合わせて滲み出た緑色の汁がすじを走らせていく。ほとんどの人はそれと気づかないまま植物のようなものと、そこから滲出した汁を踏んで更に床を汚していく。

品川を超えたあとは川崎、横浜で大勢の人が下車していった。最寄り駅へ着く頃には随分と人は少なくなった。

空席の真上の網棚には忘れ去られた紫色の花束。

それじゃ、また来年。