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木灘日記

日記を書きます。

田所広成追悼イベントのこと(さっぽろももこは天才だった)

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今さらながら、去る1/19に行われた田所広成追悼イベント(旧名・メイドさんロックンロール20週年記念感謝祭)に行ってきた。

メイドさんロックンロールとは曲名であり、1998年に発売された『MAID iN HEAVEN ~愛という名の欲望~』というエロゲーの楽曲であり、田所広成はその作詞作曲者である。

発売当時の僕は完全にキッズであったため年代的には合わないのだが、その後、所謂「電波ソング」などと呼ばれるジャンルが流行した際にその楽曲群から田所広成の存在を知った。
ちなみに僕の一番好きな田所広成ソングは「学園ソドム 校歌」で、これはアコースティックギターのちょっとセンチメンタルなメロディに乗せて最低な歌詞を田所広成本人が高らかに歌い上げる名曲なのだが、あまりにもアレな歌詞なので生涯誰にも紹介することはないであろうと思われるのがちょっと寂しい。……別に寂しくはないな。

さて、昨年11月に開催が告知されたこのイベントだが、告知から約1ヶ月後の12月上旬、主催である田所広成が急逝してしまった。突然の訃報に界隈に激震が走る中、イベントに出演する予定だった共演者やゲストが故人の想いを汲み、計画中だった諸々を引き継ぐことで今回の追悼ライブが成立させた背景がある。関係者には感謝したい。

イベントはライブを中心に合間々々に関係者の業界トークや故人との思い出話などを挟む構成で、率直に言って大変良いイベントだったと思う。

途中、入場券代わりに配布されたピックの落とし物に勝手に自分のサインを書き込み、それでオークションを始める人間が現れ、更に僕の目の前に座っていた男がそれを5000円で落札するというクソみたいな空間が発生して(僕の中の)空気が凍ったが、まあそんなことは素晴らしい催しの数々の前には些末な問題だ。
ちなみに隣には瀬戸口廉也が座っていて、座席カードに書かれた字の汚さに勝手に共感と好感を抱いたりなどした。

ライブは高見龍がYU-NOの曲でDJをやったり非常に貴重なものが幾つも見られたが、中でもPINPONSのプレイは本当に素晴らしいものだった。「幸福ノ原理」のセルフカバーが生で聴けるなんて! 短くも印象的なイントロが流れた瞬間、強烈な多幸感に襲われて頭がくらくらしてしまった。

さっぽろももこはMCでは若干挙動に怪しいところがある愛らしい感じなのだが、所々の発言が異常に鋭かったりエスプリが効いているのが面白く、また何より歌い始めると身に纏う雰囲気が豹変するのが良い。

さよならを教えて」を歌っている時の様子をお前ら目に焼き付けたか? まずその前にイベントへ行った人間でこの日記を読んでいる人間がいないか。まあいい、僕は焼き付けた。気持ち良くなりすぎて幻覚を見た可能性もある。
目は遠く虚空を見つめるように据わり、肉体は何かが降りてきたように不規則に揺れる、そしてそんな状態から発せられているとは思えない芯のある歌声。素晴らしい。完全に天才だ。CD買います。

20周年記念であり追悼のイベントなのでこれ一回限りのものだと思ったが、案外実入りが良かったのか来年もやるとかやらないとか言っていた。

最後の出演者と観客揃っての記念撮影には参加しなかった。そして退場案内のアナウンスと共に外へ出た。

控えのスペースに対してホスト側の人数が多すぎるせいで通路が出演者やゲストで溢れていて、単純に居場所がないのか見送りしてくれているのか良く分からない感じになりつつ、高見龍がいたので「ありがとうございます、楽しかったです」と言うと、手を差し伸べられ握手を求められた。

慌てて片手を差し出すと、彼はびっくりするくらい真摯な調子で「ありがとうございました」と僕の手を両手で強く握りしめた。
僕はそれに酷く動揺してしまって、再び「楽しかったです」と言うばかりで、彼の手に自分のもう片方の手を重ねることが出来なかった。心残りがあるとすればそれくらいだ。

しかしPINPONSのライブは本当に良かったなあ。