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木灘日記

日記を書きます。

実質初龍彦と言っておこう - 澁澤龍彦『ねむり姫』

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恥ずかしながら澁澤龍彦といえばサドでしょ、程度の認識のままで長らく過ごしてきた。澁澤龍彦の名が入った本で読んだものと言えばサドとマンディアルグくらいで、つまり、まあ、やはりその程度であった。

これまで翻訳しか読んでいないかったので、『ねむり姫』は実質的に僕の初澁澤龍彦と言って良いだろうと思う。翻訳やエッセイについてばかり耳にしていたから、侮っていたところが無いでもないのだが、読んでみて、もっと早く読んでりゃ良かったなと率直に思った。

まだこの本を読んだだけなので断言出来ないが、澁澤龍彦の描く女は僕の性的嗜好にかなり刺さるのではと見ている。6編の短編いずれも、儚い美しさ、毒気、死と退廃、淫靡、このあたりのワードのどれかが掠ってくるような女が登場するので大変良かった。

僕は「わるいおんな」が好きなのだ。例えば谷崎潤一郎春琴抄』の春琴、坂口安吾『夜長姫と耳男』の夜長姫、同じく安吾の『篠笹の陰の顔』の高木の妹、この辺り。特に一押しは高木の妹なのだが、所謂「ロリババア」のような赴きがある。いや、別にロリババアが好きなわけではないのだが、まあ、なんか詳しく解説明しようとすると込み入った話になりそうだから、やめておこう。

他にも登場人物の女のことが気に入った本が色々あるが、この本もその中の一つに収まることになりそうだなと思いながら読んでいた。ただ、澁澤龍彦は僕の好みの女の属性を扱っているが、その点だけを掘り下げているわけではないから、上に挙げた作品のように深々と突き刺さる感じの作品は描いていないかもしれない。

とはいえ、今回本作を読んでいて感じたのは、澁澤龍彦はそういった性的嗜好に関する考察を掘り下げたエッセイをきっと書いているだろうということなので、今後はエッセイも読んでいこうと思った。そんな次第。