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木灘日記

日記を書きます。

酒井あゆみ『売春という病』を読んだ

 

売春という病 (河出文庫)

売春という病 (河出文庫)

 


先日、PINPONSのすばらしいアルバムを手に入れた店でついで(失礼)に買った本だ。

僕は主に職場で始業前と昼休みに本を読む。小説一冊にだいたい一週間~三週間くらいかかるのだが、この本は二日で読み終わった。自身も元性風俗従事者であった著者が、元、或いは現役の性風俗従事者の女性たちに話を聞くという体裁の本で、内容も言葉も平易で読み易かった。

取材対象である女性たちの年齢はばらばらながら、いずれも家庭環境に問題がある場合が多いようで、まあ、そりゃそうだろうという感じではあったが、自分の知らない世界について当事者が語る言葉はいつだって興味深い。僕は時代を問わず性風俗という文化について関心があるので、それも楽しむに際して一助となった。

ただ、取材相手の語る内容に被せるように著者が頻繁にこちら(読者)を向きながら自分語りを始めたり、相手の境遇を自分に当て嵌めてその心情を勝手に忖度して説明しだすなど、著者の自己主張がやたらと強いのがかなり鬱陶しく感じた。

自分の思考や感情を正確に言語化することは訓練無しではそこそこ難しいものだと思うので、良かれと思って代弁したり表現を大げさにしたりしている部分もきっとあるのだろうが、著者の自意識が透け過ぎて「勝手に持論を展開すなよ」という突っ込みを入れたくなることが多い。まあ、字数稼ぎの感もあって、ひょっとしたらそっちがメインかもしれなくて、そういうことなら、まあ、と思わなくもないのだが。

例えば、良家に生まれ、自身も医者でありながら性風俗に務めていたという取材相手の語りに対してこういうのが挟まれたりする。

春菜の祖父は弁護士、父は製紙会社の幹部。一方、私は医者の家系。私は、自分にそういう血が流れていることを意識すると今でもムカムカする。極力日頃は出さないようにしているが、万が一、ポロッと出るのが怖い。

こんな具合の同調風自慢モノローグを唐突にぶっ込んできたりするので読んでて正直キツい。自分が気持ちよくなりたがりすぎている。

おい、今はあんたの順番じゃねえだろ! それともあれか? こんな風に感じるのは僕が卑屈過ぎるのか? 確かにそうかもしれねえけど、でもさあ、やっぱ時々あんた臭うぜ! ってな感じ。

SM風俗について、技量と経験はS役の方がずっと必要だが金銭的にはM役の方が良い、って話はかなり良かった。