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木灘日記

日記を書きます。

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』を観た

 


日曜の夜はだいたい精神の具合を悪くするので眠りに就くのが遅くなる。0時過ぎには寝ようと思いながらも結局2時くらいまでは起きているので、どうせなら映画でも観るかとamazon primeでソフトな感じの映画を探していたところ目に止まった。

エレベーターのないマンションの5階に住む老夫婦と老犬。日課の散歩を済ませた夫と犬は階段を登るだけで息を切らせてしまうなど、老いた身体でここに住み続けるのは難しいと考え、現実的な判断として長年親しんだ我が家を売りエレベーター付きの新しい部屋を買おうとする話。

ストーリーに特にこれといった山や谷があるわけではないんだけど、家の売買という一大イベントの慌ただしさがよく描かれていると思う。だんだん余裕がなくなってきて、ストレスが溜まり、多少希望に届かない条件であっても早く話に決着をつけてしまいたい。そんな非常に身に覚えのある感覚が蘇ってくる。

老夫婦は現実では家の売買に纏わるエージェントやら購入希望者とのやり取りに神経をすり減らしながら、過去の幸せな思い出を追想していく。二人の肉体は老いるばかりだし、飼い犬だって老齢によるヘルニアを起こして手術代で1万ドルかかったりしている。

でも、そういった身体的・現実的な問題を前にしても、本当に家を売り新しい環境に移ることが幸せに繋がるのだろうか。そも、幸福とはいったい? 今の安定した幸福を手放して、次の幸福へ飛び移るのはいつが最善のタイミングなんだ? それは誰にも分からない。

家の売買に伴うドタバタや傍若無人な内見の連中の振る舞いはかなりストレスフルなんだけど、小品の良作って感じで良かった。

あと何より、上映時間が92分っていうのが良い。上映時間が100分未満の映画には基本的に好感を持ってしまうんだよな。